ざつ

SNSで呟くには長すぎる独り言。あとで見返して作品視聴当時の自分がどう感じたのかを知るための記録

続・夕陽のガンマン トゥーコと兄のシーン

続・夕陽のガンマンを何度かみなおしてきました。短期間に一つの映画をこれほど繰り返し視聴するのははじめてです。この作品は観るたび評価が上がるタイプの作品ですね。その中で個人的に一番好きなシーンを挙げてみました。この記事では主人公はブロンディーと呼ばせていただきます。

ちなみに英語でしか見てません。字幕も英語です。

 

トゥーコと兄・パブロの会話

 

いきなりベストシーンを挙げますが、トゥーコと兄の会話は黄金です。このシーン以前ではブロンディーと賞金詐欺をしたり、報復のためブロンディーを水なし手も縛った状態でで砂漠を連れ歩いて死なせかけたりで、いかにも悪人でした。大金が埋められた墓標を知ったブロンディーを必死に生かそうとする様子を見ても、まだ印象は変わりませんでした。自分の理のためだけに生かし、励ましているのが見え見えだったのです。

しかし、兄・パブロとの会話で印象は変わりました。パブロと9年ぶりに再会したトゥーコは気さくに兄に話しかけます。パブロから両親の死を知らされた時、笑顔だったトゥーコの顔が悲しみを帯びていく様は名演技です。この部分だけでもトゥーコに人間味を大いに感じられました。その後彼の家族は貧困で、この兄弟が生き残るには神父になるか盗賊になるかしか道がなく、兄が前者、弟が後者を選んだとのことです。パブロが神父になるため家を出た後、トゥーコも努力したけどうまくいかなかったと言っていました。明言はされていませんが、おそらくその時に盗みなどに手を染めたものだと思っています。この後、殴り合って別れた際、パブロが一人で"forgive me, brother"と呟きます。彼自身も責任や負い目を感じているのでしょう。その上で道を正すのも諦め、どうにもならないことを理解した上で達観した表情に見えました。

兄と別れた後、トゥーコはブロンディーと馬車の操縦席で楽しそうに兄のことを話します。自分の兄がいかにいい人か、会えばいつも自分に引き止めてくる事など、先ほどの様子だけ見れば、話は違うことがわかります。9年ぶりの再会だったので、嘘でしょう。嘘の理由はわかりませんが、ブロンディーに対して見栄を張っていると思っています。なんにせよ、彼は「ugly」です。虚栄心は人間の醜い感情です。

その後の「俺のような流れ者にも、世界のどこかにスープ一杯を拒否しない兄がいる」(私訳)というセリフは一番好きなセリフです。これはトゥーコの本心だと信じたいですね。先ほどの兄弟のやりとりを覗き見していたブロンディーも、嘘だと解りつつも静かに相槌を打ちます。ブロンディーが一連の流れでトゥーコに同情したかどうかは不明です。しかし、そうとも取れるかのような表情と、静かな"sure"はいいものです。

このシーンで、トゥーコは単にシナリオ上、主人公を邪魔するだけの悪役から、重要で興味深い、人間味あふれる男となったのです。たった6〜7分かそこらでトゥーコというキャラクターの深みが増し、印象もガラッと変わる場面なので一番好きなシーンですね。

 

トゥーコはこの作品で一番好きなキャラです。かっこいい場面もあれば、卑劣な様がブロンディーやエンジェルアイと比べ、小物感がある所もある。彼を演じたイーライ・ウォラックの演技も素晴らしいものです。メキシカンの英語は確かにあんな感じの話し方で、3人の中で一番表情豊かなので見ていて楽しかったです。

この記事は元々好きなシーンをいくつか挙げる予定でしたが、長くなってしまったので一番好きなシーンだけで切り上げます。