ざつ

SNSで呟くには長すぎる独り言。あとで見返して作品視聴当時の自分がどう感じたのかを知るための記録

BEASTARS 最終巻までの感想

BEASTARS 最終巻が発売されたので、単行本派の私はようやく読むことができました。独特な雰囲気と世界観を持った素晴らしいヒューマン(?)ドラマでした。

作品のテーマの一つに肉食と草食の共存がありますが、飽くまでレゴシがハルとくっつくまでのお話って感じですかね。始まりも終わりもレゴシとハルで、四畳半神話から引用しますが、「成就した恋ほど語るに値しないものはない」を地で行く感じで終わりますね。(レゴシとハルがくっつくのは明白なのでネタバレに入れていません)この二人がくっついた後の苦労などを描く事もできたはずです。しかしこれは飽くまでBEASTARS が終ってしまうのが惜しい私の自己中心的な希望ですね。正直もっと他のキャラや世界観を楽しみたかったです。

 

アニメ2期も楽しみです。

 

以下ネタバレ注意

 

肉食と草食の共存

最終的に肉食獣たちの希望により、裏市は取り壊されました。しかし肉食が今後どう本能を抑えつつ生きていくのか、という問題への解決は宙に浮いたままです。解決策の一つに生死の価値観が違う海中生物を食べるという提案もありましたが、海中生物に依存した貿易は危険だということで、ヤフヤによって却下されました。あとは昆虫食とか?

当然肉食獣たちも一枚板ではない上、本能が抑えきれないが故の食さつ事件は起こり、そのたびに肉食草食間に亀裂が入ったりしたりするのでしょうね。

無理に解決せず、改善に向かうエンドって感じですね。問題が複雑だと納得できる解決方法なんてそうそうありませんからね。ゴウヒン先生のカウンセリングのように、徐々に改善を目指すって感じでいいですよね。

 

ルイ

もう一人の主人公といってもいい。レゴシのために足を捨て、会社の株価も放り投げて駆けつけるとか強すぎる。獅子組との関係もいい。彼らが出所したら是非居場所を用意してほしいものです。なんか獅子組という名の建設会社でも立ち上げてホーンズ財閥の取引相手とかになってそう。

レゴシとハルの対比でジュノとくっつくと思いきや、しっかり婚約者と結婚。ジュノには悪いけど、ルイらしいしやっぱ父の遺した会社のためですからね。婚約者も婚約者でなんだかんだ可愛げがありそうだったし、いい夫婦になると思う。

 

メロン

正直あまり好きなキャラではありませんでした。作者は気に入っている感じでしたが。犯罪者にファンができる描写はなんか生生しいですね。いやまぁ、おそらく犯罪者だからとかではなく、ハーフとかすら関係なくメロン本人を応援してくれる人が沢山いるよ!だからハーフとかあまり気にしないでね!というのが狙いだったのでしょう。強いし知性もカリスマ性もありますからね。これからはあまり乱暴しないでね。

 

獅子組

好き。イブキが一番好きだったけど死んじゃった。死に際も含めて好きだからもどかしい。

 

レゴシ

日常とシリアスモードに緩急のある主人公。後半からはシリアスが多すぎて常につよつよモードだった。メロンと対比できると思いきや、レゴシはクオーター。どちらかというとレゴシの母親がそれ。レゴシは母は救えなかったけどメロンは何とか救おうとしたのかな。それにしても哺乳類同士のメロンはともかく、哺乳類と爬虫類でもできちゃうのは凄い設定ですよね。子供は変温?恒温?卵生なのか?などいろいろ気になります。

日常パートの相棒がハル(かジャック)だとすればシリアスパートの相棒はルイって感じ。最終的にハルと付き合って物語は終わりますが、最終巻の巻末にレゴシとハルがそれぞれの義家族と過ごしている絵があり、それがまた微笑ましい事。恋愛に関して奥手だと思いきや、割と早い段階で直接告白しようとしたり男気はあるからあまりもどかしく無い。ジュノにぶれたりもしなかった一途さ。

 

ダイナミック。動きも表情も。重要なシーンがしっかりインパクトのある描き方をする作者だと思います。アクション部分の動きも分かりやすい。特徴的なのは毛を表現するためなのか、結構キャラの線が二重三重になったり、トーンの代わりにマーカーみたいな太い筆でシャカシャカ塗ってる部分がみられます。また、毛や模様が多いキャラが多数いるので書き込みも大変そうですね。背景のモブがたまに面白かわいい。

世界観を壊さないためか、巻末に描かれがちな裏話でも作者や担当が動物人間化されています。

 

BEASTARS刺激のある作品でした。偏見など他の作品に当てはめる事はできますが、世界観やキャラの行動、考え、価値観、またはそれを表現する方法が素晴らしかったです。ここまで動物的な視点での悩みを描いた作品、私は他には知りません。ちょいちょい世界観を深めるためだけに登場するわき役がいたのもよかったです(レゴムやアパートの住人のヒョウなど)。

本当に終わるのが惜しい作品です。今後も漫画の執筆を続けられるのかは分かりませんが、板垣巴留先生の次回作にも期待しています。