ざつ

SNSで呟くには長すぎる独り言。あとで見返して作品視聴当時の自分がどう感じたのかを知るための記録

ヴィンランド・サガ 漫画2部感想

勝手に自分が定義した2部の感想となります(アニメの後の話)

ネタバレ回避用の名前を付けるならケティル編とでも名付けましょうか。

個人的にかなり好きで読んでいて有意義な気もしたので、アニメ化してほしいですね。でもアニメ映えすっかなぁ。

 

ちょっとヴィンランド・サガという作品のジェネリックな感想を。

まず、歴史フィクションとしてかなり大好きです。フィクションとはいえ、ファンタジー的なものに頼らないのがいいですね。(トルケルとかはファンタジーに近いか)当時の価値観や生活様式なども知れて読んでいて楽しいです。

絵も素晴らしい。作品としてのテーマも一貫していてぶれない名作だと思います。

はやくアニメ2期やってくれー

 

ネタバレ注意

 

定義

ネタバレ回避でケティル編といいましたが、実際は奴隷編とか呼ばれてるのかな。トルフィンがレイフとケティル農場を発つまでを当記事では2部とします。3部も既に読んだのですが、それは別の記事で。

実はかなり昔にちょこっと読んだことがありましたが、その時は2部も終わっていなかった上、内容は全く覚えていませんでした。

 

トルフィン

1部(アシェラッド死後あるいはトルフィン復讐編)から結構経ったトルフィンはクヌートを斬りつけた事で奴隷身分に落とされていました。その説明なく、トルフィンは既に奴隷で再登場するので読者的には結構ショッキングでは?

トルフィンは一言でいうと運がいいと思います。

ケティル農場でなければ彼の人生、いくらでも悪い方に向かったのではないかと思います。ケティルはもちろん、エイナル、スヴェルケル、アルネイズ、蛇、パティールなど、良くしてくれた人が沢山いました。自由になれる条件も付いてました。

それまで復讐だけを支えに生きてきたトルフィンは、その対象を失ったことで空っぽになりました。戦士ではなくなり、トルフィンは罪悪感に苦しんでいました。おそらく「愛」と同じく、罪悪感という言葉自体が存在しない時代だったのでしょうね。細かく調べていませんが、罪悪感という単語は使われていなかったと思います。トルフィンは罪悪感から亡者たちの悪夢に毎晩苛まれていました。この亡者を背負い、自分が償う方法は同じくらいの生と再生を、虐げられた人たちが安心して暮らせる戦争も奴隷も無い国の建設だとかトルフィンは決心します。これが本当の戦いだと。それともう暴力と決別することも決心しました(それでもやむを得ず戦闘することも)。これがこの作品におけるゴールでしょうね。

キャラクターとしてはエイナルやスヴェルケルたちとの交流で大きく成長しました。エイナルが言っていた通り、トルフィンは良くしてもらったことが無い(実際には多少はあったけどそれに気が付かなかった。おそらくイングランドで匿ってくれたおばちゃん以来、それを無視してきたのかもしれません)。空っぽになったことである意味余裕が生まれ、そういった事に気が付いたり、麦の発芽に感動したりするようになりました。だからこそ自分を見つめなおす事ができたのでしょう。

 戦闘スキルは相変わらずなので頼もしい限り。

エイナル

トルフィン初の友人。そこから兄弟という間柄にまで発展した。エイナルは人として出来た男で、戦士を憎みつつもトルフィンに決してぶつけず、それどころか何度もトルフィンを助けました。

 

アルネイズ

時代の犠牲者の一人。死が救済になるほど苦しんだのは心が痛みますね。せめてエイナルたちとの井戸端会議が多少救いになってくれてたら良いよね。

 

ケティル

最終的にああなったとはいえ、個人的に憎めない男。あえて言うなら自分の器を超える財産を持ってしまった上、いろいろ理不尽な事が起こってしまったのが運の尽きでしたね。追い詰められてああなったのも人間らしくはありますね。

小心者ながら、自らも鍬を持ち、奴隷に開放のチャンスを与え、彼らに暴力は振らない人物でした。彼の元でなかったらトルフィンもエイナルも果たしていい方向に成長していたかどうか。良い人だからといって理不尽な目から逃れるわけでもないのは時代の残酷さですね。

 

オルマル

ケティルとは逆に最後に成長したものの、個人的には汚名返上するのはまだまだこれからという感じでした。名前も多分でてないあの女性を幸せにしてくれ。

親ケティルの臆病な部分を濃く受け継いだものの、当時版イキる若者とった感じで、戦場にあこがれ、実力もないのにその高いプライドで色んなトラブルに起こす。しかしケティル農場が戦場になった際、現実を知り、時代当主としてクヌートに降参する。ようやく余分なプライドを捨てて成長することができた。

 

スヴェルケル

素直になれないおじいちゃんタイプのキャラ。

気難しいとか言われているが理不尽な事は全くないので好感度しか上がらない。

 

トールギル

クヌートから再度部下にほしいとまで言われる男。本当にケティルの息子か?

好戦的だが意外と弟には優しい。トルケルと気が合いそうだがどっかいった。

 

ティー

いつかトルフィンたちと敵対するのではないかと当初は訝しんでいましたが、最期まで公平な方でした。畑荒らしの証拠集めのために泥だらけになったところから信頼度マックスでした。ヨームとの戦いに駆り出された時は嫌な予感がしましたが、生存してて良かった~。

 

客人たち

基本的に客人たちは仲間意識が高いし、しっかり仇を取ろうとする。

スヴェルケルさんと仲良しさん。どういう関係か分からないけどまぁ絡んでいるうちに仲良くなったんだろうなぁ。トルフィンたちにも身分で態度を変えるわけでもない。かといって客人>トルフィンたちというのは一貫して変わらない。

客人たちをろくでなしだと言いつつもしっかり大切にしている所をみると、部下に慕われているのは戦闘力だけじゃないことが伺えます。

キツネ

なんか客人たちの副リーダー的な男。どう評していいか分からないけどそこそこ良いキャラだったと思います。ヨーム戦士団にビビってたシーンはバカにしていたオルマルとの比較かなんかなのかな。客人たちの中では割と冷静というか合理的な感じがします。標的を前に騒ぐ味方をなだめようとしたり、ヨーム戦士団との戦力差から足が竦んだり。

アナグマ

片手を斬られてもヨーム戦士団に立ち向かったのは勇気というか、頭に血が上っただけだと思われる。なんか初登場から太った気がする。

あれ?ラストでアナグマの手戻ってない?って思ったら別のやつだった。

 

クヌート

もう一人の主人公かもしれない。

それはそうと、すっかり覇王の貫禄が見受けられますね。クヌート王は実在した人物なので(トルフィン、トルケル、リーフなどもそう)彼の道筋は歴史を見ればわかると思いますが、ヴィンランドサガはうまく調理していて感心します。
クヌートは毒を用い、敵を倒していきます。ハロルドまで手に掛けた時は、かつてのスヴェン王と同じ思考、同じ行動に至ったな!と思ったものです。一部でもスヴェン王が自分に似ていると言っていたけど正しくって感じですね。

まさかスヴェン王がまだ登場するとは。スヴェン王の言う呪いは王として、多くのものを奪った事に対する罪悪感の事ではないかと思っています。クヌートがスヴェン王の幻覚を見るのもトルフィンが亡者たちを見える事のパラレルだと感じざるを得ません。トルフィンと違い、クヌートは苛まれている感じではなさそうだったので単に私の勝手な憶測でしょうがね。

 

レイフ

えートルフィンとの感動の再開のシーンもないの?まぁ状況的に仕方ありませんでしたが。

 

トルフィン100発耐久

かなり印象的なシーン。

最初は茶化してた周りの戦士たちが次第に静まり、真剣なまなざしでトルフィンを見守っていたのが素晴らしい。言葉では説得できなかった人たちを行動で説き伏せた感じでいいですね。100発耐えた後にうおおおおって騒がず、静寂を保っていたのもいい。殴り手が素直に尊敬の言葉を口にしたのもこのシーンの良さを引き立てます。

 

トルフィンとクヌートの再開

クヌートとトルフィンの絆みたいなものがみれてよかった。2部からずっと冷徹だったクヌートが笑った際、1部の頃の面影が見えてなんだか安心しました。

クヌートが楽土建設を目指す際にでる犠牲の逃げ場をトルフィンが用意するという同じ目標を持つことになります。1部では会話もあまりなかった二人でしたが、なんだか特別な存在って感じですね。

 

総評

ヴィンランド目指す前にまずはトルフィンの成長と罪を自覚すること、そして人生のゴールを見つけさせるためのケティル編だと思いました。1部は本当にプロローグだったんですね。2部も多いに楽しませていただきました。先が楽しみですね。