ざつ

SNSで呟くには長すぎる独り言。あとで見返して作品視聴当時の自分がどう感じたのかを知るための記録

Beastars(アニメ) 感想 抑圧された世界

原作未読

 

Beastars(以下ビースターズ)は不思議で複雑なアニメです。人型の動物たちだけの世界で、主人公、レゴシの学園生活が描かれています。この世界は様々な動物がいますが、主な溝は肉食獣と草食獣の間にあります。この世界には人型でない動物はいないようで、肉を食べるということは獣人を食べることになります。なので肉食獣といえど肉食は違法で、肉食獣たちは本能を抑圧されています。この作品の大きなテーマの一つはレゴシの肉食獣としての様々な葛藤です。草食獣との恋、肉食の本能、周囲の目、身体的能力などです。一見人種間の偏見などに似通ったテーマですが、動物の本能は独特なスパイスだと思います。大局的に、肉食獣たちの本能が無理やり押さえ込まれている歪んだ世界に対し、どう生き抜くのかもテーマの一つなのかもしれません。よく比較されているズートピアとの違いですね、肉食の衝動に関する葛藤は。

 

動物が出てくるのですが、決して子供向けではありません。むしろダークなテーマに触れているので誰にでもおすすめはしませんが、決してケモナー向けでもありません。

 

 

以下ネタバレ(アニメのみ)

 

 

 予備知識0で見始めたので何を期待すればいいか分かりませんでしたが、まさかウサギの下着姿を見せられる事になるとは思いませんでした。ああいうのが好きな方には申し訳ありませんが、正直不気味でした。ハル自体、人の体にうさぎの顔をそのまま貼り付けた雑コラのようなデザインなのに下着姿になるとますます顔と体のミスマッチ具合が加速します。私はいわゆるケモナーではありませんが、ツイッターのタイムラインなどでケモ嗜好の絵を目にしたことはあります。しかしどれもハルほど歪には感じませんでした。個人的にこれがこの作品で一番気になる点です。

 

アニメーション

本編はキャラたちを3DCGで描写していますが、すごく魅力的な出来です。動物たちの動きも表情も滑らかです。戦闘シーンなど、しっかり重みを感じることもできました。

OPのストップモーションも良いですね。

 

レゴシ

レゴシは肉食獣の本能を抑え、静かに学園生活を送ろうとする演劇部の美術チームです。いいハートを持っており、彼のモノローグは毎回心を打たれます(6話最後のアオバのシーンなど)。レゴシはうじうじしている面もありますが、行動力があるので見ていてイラつく様なキャラではありません。自分の恋心を自覚するとしっかりアプローチを始めたり、告白すると決めたら行動に移していました。重要な場面で周りに流されない強さも持っています。6話でビルたちが指を買おうとするところでしっかり拒絶するところとか分かりやすいですね。

彼を知らない連中からは孤立気味ですが、ルームメイトやチームメイトからは結構慕われている様子もあります。幼馴染のジャックはもちろん、他のルームメイトとの仲も良好です。ビルとは意見が違ったり喧嘩もしましたが軋轢は生まれてない様にも見えます。ところで作中でも言われていましたが、ビルはレゴシとは真逆な存在ですね。だからこそ、本能を押さえ込もうとするレゴシにはビルの姿が若干きついのかもしれません。ダイエット中に目の前で美味しいものたらふく食べてる姿は見たくないものですから。

 

ハル

ハルが誰とでも寝るという噂は、当初デマだと思っていました。漫画やアニメに慣れていると、大抵ヒロインや味方側のキャラに対する悪評はデタラメだったり勘違いだったりするパターンが多いものです。Beastarsでは違いました。意表をつかれました。彼を取られたいじめっ子の作り話でもなく、ハルは本当に誰とでも寝るウサギだったのです。これこそまさに文字通りのウサビッ○ですね。ハルがそういった行為を進んでするのはベッド上なら対等だから、だそうです。小型の草食獣であるハルは周りから守ってあげたいと思える存在で常に下の存在として扱われ、自分自身を見てもらえない事に不満を感じていたそうです。他のウサギが同じことをしていない所から、種族的なものではなく、個人的なものだと分かります。強さなのか弱さなのか分かりませんが、それが彼女の生き方なのでしょう私には理解できない思考ですが、おそらく誰もが共感するようなことでも無いと思います。

 

ルイ

ルイは立派な角を生やした雄鹿で学園の人気者で、さらに演劇部のスターです。草食獣でありながら、この作品のどの肉食獣よりも迫力があり、彼の強さは捕食者の立場に怯えて暮らす草食獣たちの希望です。しかし、彼自身肉食獣との覆せない肉体的な差を実感しており苦悩し、それゆえに狼である強さを持ちつつそれを隠そうとするレゴシを理解できないそうです。彼もハルに恋愛感情を持っているそうですが、アニメの最終回で生死と行方が不明となっています。十中八九生きているでしょう。ルイは肉として売られていた過去があり、それゆえに肉食獣を憎んでいることは判明しましたが、アニメ時点ではこれ以上語る事はありません。将来的にどんな野望を持っているかが今後の注目ポイントになるでしょう。

 

他のキャラクター

ジャックやレゴシのルームメイトたちは無難にいい動物たちです。

レゴムのお話は短いながらも面白く、世界観を理解させるのに一役買いました。

アオバもいい鳥です。レゴシの身近にも、肉食の本能に悩む動物もいると気づかせます。

ジュノはあきらかな負けヒロインですね。

 

 

 

気になった点

・先述通り、ハルのデザイン

・ハルがシシ組のボスに食われる直前の、ハルのモノローグシーンが長すぎるように感じました。

・ 疑問なのですが、あの世界ではウサギと鹿、ウサギと狼が性行為をしても子供は生まれるのでしょうか?あの世界では動物たちの手など、一部の身体的特徴が人間のそれとなっていたので、染色体もそうなっている設定があるのかもしれません。しかし、作中(少なくともアニメ)にはそういった結果の雑種は見当たらなかったので、やはり現実世界と同じ理屈なのでしょうね。あるいは可能ですが、よほどのタブーなのかもしれません。

 

漫画版は将来的に読もうと思っています。2期の制作がすでに発表されているので、そちらも楽しみです。そういえば1話の食殺事件の犯人は誰だったのでしょう?