ざつ

SNSで呟くには長すぎる独り言。あとで見返して作品視聴当時の自分がどう感じたのかを知るための記録

ピンポン(アニメ) 感想 美しい!素晴らしい!

長らく視聴したかったピンポンという卓球アニメをついに視聴しました。原作は未読ですが、素晴らしいアニメでした。期待して見ましたが、正直それでも見くびっていました。卓球の試合はすごいんだろうなぁとしか思っておらず、まさかストーリーやキャラクターがここまでのものとは夢にも思っていませんでした。嬉し泣きしそうになったアニメはピンポンだけです。たった11話ですが、多くの登場人物に感情移入できましたし、成長も見られました。本当に登場シーンが少ないキャラでも好きになれたのは素晴らしい事だと思います。一人として嫌なキャラはおらず、視聴完了後の後味は最高でした。全話通していい気分で観れるアニメです。絶対におすすめです。見た目に抵抗がある方もいらっしゃるでしょうが、それでも好きになります。ジョジョとかだって絵柄や見た目に抵抗あるって方もはまっていきます。同じことです。一目見て、あまりいい印象は受けませんが、見ていくうちに登場人物がみんなかっこよく見えてきます。マジです。

絵柄でこの作品を敬遠する人が多いのは非常に残念に思っています。暇つぶしでもいいのでなんとか多くの人に観て欲しいアニメです。普段アニメを見ないタイプの人にもおすすめしたいです。

ちなみに卓球の専門用語もいくつかでてきますが、自然と理解できるものばかりなのでそちらに抵抗のある方は問題ありません。

 

以下ネタバレ注意(アニメのみ)

 

 

 

アニメーション

この作品を語るにあたり、避けては通れない話題ですね。人に合う合わないがあるスタイルですが、私は湯浅監督のアニメーションにはいつだって驚かされてきた人間なので、かなり好きです。キャラの心理的描写を反映した場面がいくつもありました。例としては孔(コン・ウェンガ)VS風間で風間が巨大化して孔が小さくなって孔の萎縮具合を表したり、孔がボールを追う時、ラケットと右腕が大きく、胴体や足が小さくなったりして焦りを表現したり、このアニメはこういった描写が多いです。にも関わらず、見辛くはありませんでした。孔の場合は飛行機という形で彼の夢が物理的に描写され、幾度も目的地にたどり着かない(叶わない)描写もありましたね。

さらに特徴を挙げるとすれば、コマ割りの多様ですね。まるで漫画のように、1画面に複数のコマを入れ、順に動かしていく手法が多かったです。試合中に多く観られ、人画面に選手の動き、球の動き、観客の反応などを詰め込んでいました。同じ画面に収まってはいるものの、各コマが同時に動かず、順番に動くことによって時系列を把握できるのでむしろ理解しやすかったです。このような技術もあるのですね。

視覚的に語りかけてくるのでいちいち登場人物が説明したりする必要がないのがこのアニメの強い所ですね。

 

登場人物

この作品を彩る登場人物は誰もが魅力的で、人間味あふれ、感情移入もさせられます。孔は登場時点では傲慢な卓球エリートで、こいつが悪役になるかと思いきや、母親想いで辻堂高校の選手たちと絆を育む様は心が温まりました。辻堂の選手たちも孔とその母親に対して礼儀正しく接していて、見ていて嬉しくなりました。餃子作りの時、孔も最初は辻堂の人たちに手伝わせなくていいと言っていましたが、彼の母親が手伝わせて距離が縮まるきっかけを作ってくれたのは素晴らし場面です。深読みかもしれませんが、孔の母は息子があまり打ち解けてないと感じて手を貸してあげたのかもしれませんね。いい母親です。ここまで孔を好きになるとは思いませんでした。

佐久間(アクマ)も当初は強豪校のかませで小さい頃にスマイルをいじめてたりして嫌な描写がありましたが、5話だけで一気に彼の卓球に捧げた努力と苦悩を感じることができ、「それはアクマに卓球の才能がないからだよ。」と言われた時の彼の絶望を強く感じることができます。見下していたスマイルが憧れの風間先輩にただ一人認められ、さらに試合でボコボコにされてバッサリ才能がないと言われた時のあの真っ白の静寂に佇む佐久間の姿は私の脳みそにこびりつきました。その後、卓球を捨てたペコに復帰を促すシーンも名シーンですね。

片瀬のキャプテン太田も最初はただ嫌な奴かと思いきや、普通にペコとも会話してたり、嫌いなスマイルのために卓球ボールを調べたり調達したりで、ただの嫌な奴ではなく、一人の人間でした。

作中での印象的なシーンの一つに孔がカラオケで歌う「ひとりぼっちのクリスマスイブ」をBGMに、登場人物たちのクリスマスイブを写していくシーンがあります。一人ぼっちのスマイル、酔っ払って夜を一人で歩くペコ、工事現場で働くアクマ、彼女とのデートの約束を放ってトレーニングする風間、風間の彼女のポスターで一人遊びする真田、家業を手伝う太田、海外を目指すモブなど、美しいシーンでした。一気に各登場人物の人間味を増すいい演出でした。「ひとりぼっちのクリスマス」を歌っていた孔が一番周りに辻堂の人がいて、他の人たちは独りだったのはいいコントラストだと思いました。しかし孔も祖国や親から離れ、周りの辻堂の人たちと心を打ち明けた訳ではないので精神的には独りだったと思います。つまり、全員孤独なクリスマスイブだったのです。

スマイルとペコは最終的に卓球を楽しむという、子供の頃にあった原動力にたどり着きます。どれだけの人がこういった行動の源泉を忘れてしまい、思い出せなくなってしまったのかと考えると少し切ないですね。この作品にたびたび出てくる「飛ぶ」というテーマも、「卓球を楽しむ心」などの原動力が翼になり、多くの人を救ったり希望を与えたりする、空飛ぶヒーローになるというメッセージではないかと思っています。ロボットだったスマイルに、血が通っている人間だと思い出させたのがペコがヒーローたる所以でしょう。ペコの卓球はスマイルを救ったのです。しかし、救ったのはペコだけではありませんでした。物語の当初では、ペコに対し手を抜いていたスマイルも、最終回には本気出せるのはペコだけになったのも素晴らしいです。

ペコ対ドラゴンの試合も最高でした。山を手足で登るドラゴンと、翼で飛ぶヒーローペコの対比が好きです。その姿をみて、ドラゴンも翼を生やしてトイレの個室から飛び立つ所も嬉しくなります。ドラゴンの父親も鳥は一気に山よりさらに高みに行ける、鳥になりたいとか言っていましたね。息子のドラゴンは飛べました。ペコのおかげで。

ちなみにドラゴンの「うるさい!ばか!」も最高でした。

 

終わりに

素晴らしい作品なのでまだまだ感想は尽きません。この作品の登場人物はキャラクターではなく、人間でした。何度も言いますが、できるだけ多くの人に見て欲しいアニメです。ぜひ見ましょう。