ざつ

SNSで呟くには長すぎる独り言。あとで見返して作品視聴当時の自分がどう感じたのかを知るための記録

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 感想

後のゾンビ映画に大きな影響を与えたとされる有名な映画、ナイト・オブ・ザ・リビングデッドを視聴しました。この映画はパブリック・ドメイン、つまり著作権が切れているので探せばYoutubeにもフルで上がっていると思います。公開年は1968。

 

話はゾンビ映画と聞いて思いつくような典型的なものです。数人の登場人物がゾンビから逃れようと田舎の孤立した家に逃げ込み、ゾンビ包囲網からどうやって生存するのか、なぜこんな事態が起きているのかを楽しむ映画です。

基本的にゾンビ映画はあまり見ないのですが、この作品はかなり楽しめました。閉鎖感、意見の食い違い、サスペンス。90分ほどの上映時間にいい感じに盛り込まれています。

 

 

以下ネタバレあり

 

冒頭はバーバラという女性がジョニーという兄弟と父の墓参りに来るシーンですが、運転しているシーンからして不気味さがあふれています。そこでジョニーがゾンビに襲われ、バーバラは車で必死に逃亡するといった感じ。ここで車のエンジンがなかなかかからない〜><;などというチープな展開はありませんでした。

 

逃げた先がメインの舞台、孤立した民家です。この家にベンという有能な男も逃げ込み、さらには地下には5人の人がしばらく息を潜めて隠れていました。地下の5人が来るまで、ベンは一人で一階の窓や扉を板で封鎖しますが、その間バーバラ茫然自失とするだけ。ジョニーを失ったショックで当初は仕方ないと同情もするでしょうが、そのうちバーバラがとてつもなく鬱陶しくなります。ベンが家の中にある木材を集めるように言ってもぼーっとして動かず、作中ずっと足を引っ張り続けます。なんなら一度ベンにひっぱたかれるシーンもあり、スカッとしますが、それでもバーバラは変わりませんでした。

バーバラは作中、いくつかの状態があります。ジョニーが死んでからしばらくは殆ど喋らず茫然自失状態、一旦自分の事情を話し出したらちぐはぐでつじつまの合わない混乱期、ジョニーの死を受け入れられず、封鎖を破って彼を助けにいかなきゃと暴れるヒステリック期、ソファーの肘を舐め続ける放心状態などなど。兄弟を失ってショックなのはわかるけどひたすらベンの足を引っ張り続けていると流石に嫌になってきますね。

地下の5人はカップル+クーパー一家。クーパー家の娘はゾンビに襲われて負傷。父のハリー・クーパーは出入り口が一箇所しかない地下室が安全で、そこでことが収まるまでじっとしておけば安全だと主張。一方ベンは地下室だと逃げ場がない反撃もままならないし、物資もほどんとないから地上でラジオやテレビで情報を得ながら籠城、脱出の機会を伺うべきだと主張。どちらの主張も一理あるのですが、これまでの有能なベンの描写に対し、文句しか言わず、手を動かさないクーパー氏を見せられるとベンの肩を持ちたくなります。

カップルの男の方はトム。こっちはベンの意見に賛成しつつも、全員で協力するべき派。したがって地下に篭ろうとするクーパー氏を何度も説得しようとして逆に時間の無駄になっている気がする。

そんなクーパー氏も、一階にラジオがあると聞いた夫人に責められて結局篭ること叶わず。クーパー夫人は前々からプライドが高い夫に嫌気がさしていた模様。

テレビによると、政府が何箇所か避難所を立てたので、ベンたちは近場の避難所を目指します。そのためにガス欠のトラックに給油をし、全員で逃げることを試みますがゾンビを追い払うための松明の火が引火してトムとその恋人はトラックと共にアボーン。

事態を家から見ていたクーパー氏はベンが外にいるのにも関わらずドアを閉めたことでベンからタコ殴りにされ、最終的には撃たれました。その後地下に逃げ込んでゾンビ化した娘に食われ、同じく娘の様子を見にきたクーパー夫人も食われました。

バーバラはジョニーのゾンビを見つけて食われ、ベンはとうとう独りになりました。封鎖を破ってきたゾンビたちから逃れるために地下室へ。皮肉なことに最終的に反対していた地下室に篭る展開に。そこにはゾンビ化したクーパー夫妻がいましたが、両名を倒し、地下で事態をやり過ごします。

場面は変わり、武装した一団がゾンビを楽々駆除していくシーンになり、事態は収束に向かったことがわかります。見敵必殺でためらいなくゾンビたちを撃ち、そのうちベンのいる民家へ。ベンは外の状態を伺うために銃を構えて窓から外を覗きますが、武装集団はためらいなくベンを射殺し、終劇。

最後のベンが射殺されるシーンは自分の中でふた通り解釈があります。一つは純粋にゾンビだと思って射殺したこと。生存者なら声を上げるはずだと思ったんでしょうかね。

もう一つは人種差別的な理由でわざとだった説。色々考えましたが、ロメロ氏は人種的なテーマを盛り込むつもりは無かったそうなので、まぁ、普通に前者でしょうね。ベン役もオーデションでいまの人に決まったそうですので。

 

どうでもいいのですが、このゾンビ化の原因はNASAが宇宙から持ち帰ってきた放射線というのが作中唯一出てきた説ですね。正直何が原因かはどうでもよかったのですが。

 

ナイト・オブ・ザ・リビングデッドが名作だとされる理由がわかります。びっくり系に頼らず、ひたすら閉鎖的で不気味な雰囲気を作り上げ、避難所という希望を作り、登場人物の死からだんだん絶望に変わっていくというのをしっかり感じることができました。ご都合展開がなかったのも、グロに頼らなかったのも良かったですね。